岩城宏之/OEK/ベートーヴェン交響曲全集(6/17)

ベートーヴェン交響曲全集
 オーケストラ・アンサンブル金沢
 岩城宏之(指揮)
朝日新聞 RIKYU-95001~5

 岩城宏之が亡くなりました。

 ちょっとなぁ、と思うのは、マスコミでも大抵は話題の中心に、去年と一昨年の大晦日の、「ベートーヴェンの交響曲を一晩で全部振るマラソン」に話が集まること。ネットでも、意外と音楽の話がね、出ないんですよね。

 正直言うと、一般にはそれほど親しまれていた指揮者ではなかったと思います。ええと、音楽について、ですね。著作は多いんだけど。
 既に亡くなられた山本直純の場合、「オーケストラがやってきた」というTV番組でよく知られていたけど、岩城宏之はネスカフェのCMだし。小澤征爾は言わずと知れた著名指揮者で、N響とのトラブルも含めいろいろと露出度も高かったし、今でもそう。でも、小澤征爾がウィーンを振る遥か前から岩城宏之はウィーンを振ったのだけど。
 あまり、「成功」、というより「立身出世」に縁が無かった人でした、というとご本人は「え?」という顔をされるでしょうか。「そんなこと」としかめ面をされるでしょうか。でも、お茶の間の人気者でもなく、スターでもなく、クラシックファンからは「ああ、いるねぇ」くらいの扱われ方で。

 1988年、オーケストラ・アンサンブル金沢が設立、音楽監督に就任。以後、このオーケストラとの快進撃が始まります。この録音は、1994年、東京でのホームグラウンドだった浜離宮朝日ホールでの演奏を録音したもの。設立から6年。初のプロの室内楽オーケストラといわれれば聞こえはいいけれど、いろいろと大変だったと聞きます。これは、厳密には市販品とは言えないようです。OEKのコンサート会場でCDを売っている中、売れ残っていたのを買った覚えがあります。
 OEKといえば積極的にコンサートと録音を展開して露出度を高めたオーケストラです。その後、特に東京などで類似のオーケストラは出ているし、中には高い評価を得ているところもあるけれど、やはりこのオーケストラは他と比べ立ち位置が違うな、と思います。パイオニアでありながら、目指すところが多分違う。日本人の日本のオーケストラではなくて、金沢にあるオーケストラ。日本の、とは限らない。そこが似てるようで決定的に違う。
 そういうオーケストラを18年に渡って文字通り指揮してきたのが岩城宏之という人でした。

 今でもよく覚えているのは、このCDを買った時のコンサート。ベートーヴェンの交響曲「田園」がプログラムだったのですが、総勢確か20人ほど。このオーケストラ、もっといるんですけど、この時は特に編成を絞り込んでの演奏で、弦など全部で10人いたかというくらい。東京オペラシティのホールだったのですが、それがまたこのよく響く(響きすぎ)のホールに上手くマッチして、いい演奏でした。
 その前半は現代曲だったのだけど、それとの対比でもまた清々しい印象が強く残っています。このCDではもっといろいろですけどね。CDだとそれこそ「運命」とか入ってるけど、この小さいオーケストラなのに、それこそ「火を噴く」ようでもあったりして。このCDの演奏では、まだ荒いところも感じられたりしますが、下手な著名オーケストラの演奏より面白かったりします。この後、このオーケストラはもっと上手くなっていきますが。
 このCDと同じくらい印象が強いのが、モーツァルトの交響曲集。これもまた見事な演奏でした。機会があればまた書くかも知れませんが、オーケストラとしては小さいのに、表現はオーディナリーな現代オーケストラ風。それと、ヘルマン・プライとの、シューベルトの歌曲のオーケストラ編曲版。
 思えば、日本のオーケストラのCDなんて数少なかった、10年以上前から、この人達はこのオーケストラを独り立ちさせる為に、こんなことを続けてきてたんですね。最近は、毎年数点のCDがリリースされています。それも、物によっては1枚千円で。オーケストラ・アンサンブル金沢ここにあり、と名刺を用意する、そんな感じなんでしょうか。そんなことして何になる、ではなくて、まず聞いて貰わないと、という意識が感じられます。

 御本人がどんな想いだったのかは知らず、このオーケストラを持てたことは、きっとこの指揮者にとっては幸せだったのでしょう。

 お別れの会とか、そういうのもあるみたいですが、行く気はありません。私はただの愛好家でしかないから。それこそが意味があるんだ、とか言う人もいるだろうけど、私はそういう風には思わない人だから。それよりは、誰か新しい演奏家でも聞きに行くとか、そういうことしてた方がいいでしょ、きっと。勝手にそう思ってます。ねぇ、そうでしょう?岩城さん。




スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

verdi

Author:verdi
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2ブックマーク
FC2カウンター
118,000アクセスくらい+
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード