エリーザベト・エーベルト:シューベルト歌曲集 (11/28)

F. Schubert Lieder
 Elisabeth Ebert (soprano)
 Dieter Zechlin (piano)
Berlin Classics 0031142BC

 ドイツ・リートに限らずそうですが、歌ものというのはやはり言葉の問題がどうしても気になります。
 決して、言語が理解出来なければ楽しめないとか、そういうつもりは無いんです。そりゃぁ分かったに越したことはないとは思いますけども。ただ、そうは言っても、ある程度聞けばそれなりに言葉 - 言語としての意味はともかく - は分かってきますし、この言葉をどう歌うか、とか、発音が、とか、そういうことはどうしても気になってくるものです。

 実は一昨日、イアン・ボストリッジが歌うシューベルトの「美しき水車屋の娘」を聞いてきました。細かい話は別blogで書いたので措くとして、やはり言葉と発音というのは、歌ものでは大事な要素だなと改めて思わされたのです。
 御存知の方はイメージ出来ると思いますが、「水車屋」の18曲目、しぼめる花。恋した水車屋の娘にかつて貰った花はもう萎れてしまった。自分が死んだらそれを墓に入れておくれ。その周りで、いつの日かあの人が自分のことを思い出してくれたなら、花たちよ、皆花開け!"Herauf, Herauf!" 今こそ冬は去り、5月が訪れたのだから!
 この Herauf という言葉、これこそがこの歌のクライマックスであり、この歌曲集の一つの山でもあるのですが、でも、この Herauf がどういう言葉であるか分からないのと分かるのとでは、確かに受け取り方が違うのだと思うのです。ついでに言うと、「5月が来た」という言葉の意味も大事で、5月というのはドイツあたりでは春の初めのイメージに近いのです。日本ではむしろ夏のイメージすらある5月ですが。北海道の季節感に近いのだ、という話を聞いた事があります。5月が来た、というのは、春が来た、という以上に、再び緑が地に溢れる、というような再生のイメージも担っているのでしょう。
 てなことを感じるかどうかと言うところで、何歌ってるんだか分からないような発音だとやはりある面に於いては「歌えてない」と言わざるを得ないんだろうな、と思います。ボストリッジは、まぁこの辺ちゃんと聞こえてましたけどね。

 言い換えると、その言語を母語とする人とか、その発音が綺麗な人の歌、というのは、それだけで楽しめる要素になるのだろうな、と思うのです。

 で、このCD。もうお分かりですね。発音が綺麗なのです。多分、ドイツ語を母語としている人だと思うのですが、そういうこと以上に、発音が美しい。まるでベルリッツの発音練習用CDじゃないかしらというような、てのは言い過ぎですが、そんな気がするくらい、綺麗な発音です。
 厳密には、例えば "und" の最後が破裂音として聞こえて来たりするので、歌として綺麗か、と言われれば、異論があるかも知れません。けれど、確かに、ちゃんと読めばそう発音するだろうな、というところがその通りに発音されて、聞こえ、それで尚端整で綺麗。
 たまたま手元にあったので引き合いに出す格好になってしまって、大変に申し訳ないのだけれど、例えば鮫島有美子 - この人の歌うドイツ語の歌は、日本人としては多分白井光子の次に見事だと思うのだけれど - と較べると、特に子音の処理で差が出てしまうのですね。ドイツ語は、我々のイメージからすると、堅くてごつごつした言葉なのだけど、エーベルトが歌うとちゃんと子音が聞こえるのだけど、尖って聞こえるでなし、大袈裟になるでなし。かすかに、だけどしっかりと聞こえるので、よく分かるのです。
 鮫島有美子もいいのだけど、較べてしまうと、どうしても子音の発音が弱い。それ以上はっきりと発音してしまうとごつごつしてしまう、そんなところだと思うのです。でも、恐らくこの人の発音は、日本人の歌手としては、かなり綺麗な方だと思います。そういう難しさがある。

 なんだよ、じゃぁ、ネイティヴに歌わせるのがやっぱり一番って結論かい?いやいやそうは言わないのです。けれども、やはり上手なネイティヴというのは、強いよね、というところでしょうか。

 1964年頃、恐らく東独の人だと思います。録音は若干古めかしくて風呂場的雰囲気が漂いますが、それでも歌手の声は綺麗に捉えられています。ピアニストのディーター・ツェヒリンの名は聞いた事がありますが、不勉強で、エリーザベト・エーベルトの方はあまり聞いた事がありません。このCD同様、edel系の録音の幾つかに顔を出しているようです。
 とにかく、声はいいですよ。ここでは、「野ばら」とか「ます」、「アヴェ・マリア」、「君は我が憩い」、「楽に寄す」など定番曲を含め16曲を歌っています。約53分、声も発音もいいですが、歌い回しも素晴らしい。どの曲も素晴らしいですが、今の気分としては、「やまびこ」D.990cと、「君は我が憩い」D.776、それに、可憐さと音楽的雄大さを併せ持った「水の上にて歌う」D.774、この3曲をお勧めとしましょうか。まぁ、こういう場合のお勧めは、日によって気が変わるような気はしますが.....(笑)

 当分、ドイツ・リートが続きそうな気がします....................




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