森麻季 オペラアリア集 (12/18)

愛しい友よ ~ イタリア・オペラ・アリア集
 森麻季 (soprano)
 ヴロツラフ・スコア・オーケストラ
 大勝秀也 (conduct)
AVEX AVCL-25115


 森麻季は御存知只今売り出し中のコロラトューラ・ソプラノであります。が。2、3度聞いたことがあるだけなんですが、正直、あんまり「おおぅ」と思わされはしなかったんですよね。声は確かに綺麗だけど、線が細いというか..........
 で、どうにもその辺の感覚の差が気になっていたので、とうとうこれを聞いてみました。で、感想は?

 .........................うーん。

 「コロラトューラ・ソプラノ」という言葉は、実は、正確性を欠くきらいがあります。「コロラトューラ・ソプラノ」というと、コロラトューラの技法を持ったソプラノ歌手、という以上の意味は本来はありません。ただ、一般的には、声がよく転がることから軽めの歌手を連想されるケースが多いようです。
 ところが、実際に「コロラトューラ・ソプラノ」、或いは「コロラトューラの役柄」、例えばドニゼッティの "ルチア" やベッリーニの "清教徒" などで売った歌手というのは、実はそれほど軽い声ではありません。1980年代以降最高にして当面なかなか越える人は出ないであろう、エディタ・グルベローヴァは、実はかなりしっかりした声の持ち主です。これは、実演を聞いた人なら判ると思いますが、録音などで聞いても、実は決して軽くはないのです。ただ、それこそ如何にも軽やかに声を転がし操ってみせたので、軽いんだろうと思ってしまうだけ。
 その前ならば、ジョーン・サザランドということになります。この人も決して軽い声ではない。まぁ、私は実演は聞けてないんですけど、録音から想像するに、そんな感じです。その前を遡れば、マリア・カラスに行き着きますが、このコロラトューラの技法を持った歌手は、しかし、 Soprano Drammatico e d'agilita と呼ばれます。ドラマチック・ソプラノでありながら、アジリタの技法を持つ歌手。

 本来一般に知られていることだけれど、"ルチア" や椿姫などの役というのは、必ずしも軽い声の為の役ではありません。コロラトューラの技法を持つことは、ルチアでは必須条件に近いけれど、むしろ全体にしっかりした声が出なければ役として全う出来ません。逆に、しっかりした声さえあれば、カバリエだってルチアは歌えるのです。

 このCDを聞いてまず思うのは、録音レベルがかなり高くて、特に声の方が通常よりも高いレベルで収録されているということ。この結果、大抵の人は、ボリュームを通常より絞り気味で聞くと思います。そうすると、彼女の綺麗な声(これは確かに綺麗)の印象が強く残る。
 でも、音量を上げて聞くと、実は問題があります。高音などで、声を絞り出してる所があるのです。それと、いわゆる「コロラトューラ」。確かによく転がっているように聞こえます。装飾音も実に多彩でお見事。それはそうなんです。でも、よく聞くと、この音の高低の激しい出し入れ、確かに技巧的ではあるのですが、安定しないんですね。厳しい言い方だけれど、この技巧を取っ払ってストレートに歌えるか、となると、不安が残ります。声は確かに綺麗で透明感はある。でも、深くないのです。
 これは、音楽性などという曖昧な話ではなくて、どう聞いても、この録音では、声が、「前の方で出ている」のです。これ、こういう表現の仕方しかないのですが、口腔の所でしか声が作れていない感じなのです。事実は分かりません。でも、そういう歌い方に聞こえるということ。特に、コロラトューラ物に顕著なのです。ルチアとか、セビリヤとかね。

 正直言うと、確かにこの人コロラトューラの技法は持ってはいるけれど、本来コロラトューラ使いではないのではないかしらん。確かに、透明な声だし、それで転がせば気持ちはいいけど、向いてるとは思えないのです。正直、これを聞いていると、「ああ、一杯一杯なのかなぁ」と感じる面があります。本人、結構頑張ってしまってると思います。ちょっと気の毒。
 今度ドレスデンで歌うそうですが、役柄は薔薇の騎士のゾフィーだとか。妥当だと思います。技巧的にコロコロ転がす役、しかもその割に重たい歌を歌わなければならない役はしんどいと思います。それで売るのはいいけれど、彼女の為には、コロラトューラはもうやめていった方がいいんじゃないかな、と思います。軽い役で実績を積んでいくべきではないかなと。いわゆるレッジェーロの役。ドニゼッティなら、ルチアではなくて愛の妙薬とか。リゴレットのジルダを持ち役にしているのも、本来はその路線からのことでしょうし。もうちょっと練れてからの方が、いい声になると思います。ま、大きなお世話、でしょうけど。

 「ファン」の人達は、オーバーユースしないようにね。




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