フォーレ:レクイエム:St. John's College, Cambridge (7/20)

G.Faure : Requiem op.48 / Cantique de Jean Racine, op.11 / Messe basse
F.Poulenc : Messe en sol majeur, etc.
M. Durufle : Requiem, etc.

 Choir of St. John's College, Cambridge
 Academy of St. Martin in the Fields, etc.
 George Guest (conduct)
DECCA 436 486-2

 フォーレのレクイエムと言えば、日本人クラシックファンの間では「自分の葬式で掛けて欲しい曲」の座1、2を争うであろう名曲であります。ま、そういうことになるのも頷けるような曲ではあります。とりわけ、近代フランス音楽の中でも、比較的保守的ながら独特の和声感は、聞く者をして神秘的かつ瞑想的な印象を与えるのでしょう。それがまた、この曲の人気を高めているという、まぁそんなところかなと。

 そういうような受け取り方をされるが故か、そういうことに限らず曲調の故か、この曲の録音は、神秘的で瞑想的、耽美的なものが多いように思います。フォーレのレクイエムと言えばコルボ、と決まっているかどうかはともかく、やはり一番人気のコルボなどは、Eratoへの古い録音から、最新のものに至るまで、基本は「耽美派」なのですね。
 美しく静謐に。瞑想し、沈思黙考というよりはそのまま別世界へと入っていくような。確かにそういう音楽ではありますし、それがいいのもまた確か。ただ、そういう方向に傾いてしまい過ぎるのもちょっと抵抗があるような.....
 最近、コルボは「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」で毎年来日していて、今年はとうとうフォーレのレクイエムを持ってきました。これもまた、小編成のオーケストラを使って、精妙にして静謐の極みと言いたくなるような演奏を聴かせてくれました。第4曲のピエ・イエズスなど、独唱のアナ・キンタンシュの極上の歌唱で将に天上に引き上げられるが如く。フォーレのレクイエムとして、一つの理想型と言っていいのでしょう。
 いや、コルボに限らず、多くの演奏は、生であろうが録音であろうが、多少の方向性の差異はあっても、概ねこういうスタイルを至上としているのではないかと思います。

 でも、フォーレのレクイエムは、あくまでミサ曲なんですね。勿論、カトリックの典礼音楽として、実際にミサを執り行うに最適な音楽かと言われると疑問符は付きますが、あくまでミサの為の音楽ではあります。そうでなくても、至高の天上音楽、というのは、まぁそれはそれでいいんだけど、実際に演奏するとなると結構大変ではあるし、なんか人間離れしてきます。
 そこがいいんだよ、ということではあるだろうけど、ちょっとロマンティックに過ぎるかなぁ、と時々は思わなくもないのです。そりゃぁ確かに、そういう浮世離れした所がいいんじゃない、と言われれば、そうかと思うのだけど。とはいえ、私もそれほど詳しい訳ではないけれど、カトリックにしても、要は宗教であるにしてももう少し人間臭いもんではあるよなと思うのです。その音楽にしてもそうだし。
 音楽としては、フォーレのレクイエムに限らず、モーツァルトのミサ曲とかも、美しい演奏、劇的な演奏をよしとするのが一般的な音楽愛好家の傾向だと思います。元々、ミサというのは神への捧げものであるのだし、それならより美しくあるべきで、美しすぎるのはよろしくない、ということはないだろう?と言われれば、まぁ確かにその通り。
 でも、私はクリスチャンではないけれど、神様が捧げられたものを選別して、こっちはより美しいからいいけどこっちは今イチだから駄目ね、と言うのかどうか、ちょっと疑問なのです。そんなこと言い出したら、日常、大抵の教会ではミサなんて出来なくなってしまうでしょう?何度か、それなりの大きさの教会で、ミサ曲を聴く機会はありましたし、その多くは実際のミサに即して演奏されたものだったけど、じゃぁそういう演奏はどうなのかというと、もっと人間臭いもの、不揃いだったり、生々しい人間の息遣いが感じられたり、決して天上の音楽と見紛うものばかりではなかったと思うのです。
 天上の音楽がいけないわけではなく、それを目指すのも素晴らしいことではあるけれど、必ずしもそうでなければならないとまでは思わないのです。ある程度のレベルまで行ってくれないと、音楽としてはつまらないんですが。

 てなことを、この、ケンブリッジのセント・ジョン・カレッジ合唱団による演奏を聴いていると、つい思うのであります。どことなく、クラシック音楽としては田舎臭い雰囲気の漂う、至高にして天上とはいかないけれど、ヘタウマではなく、教会の合唱団ってこんな感じだよな、と思わせる演奏なのです。
 私は、フォーレのレクイエムは好きだし、コルボのは素晴らしいと思うけれど、あれを自分の葬式に掛けてくれ、というのは、ちょっと躊躇ってしまいます。あまりに綺麗過ぎて、ちょっと他所行きというか、死んでまでええかっこしいみたいというか。掛けて欲しいと思う人の心情は分かるけれど。でも、この何処か人間臭さのある演奏だったら、あまり違和感が無いかなと思うのです。この録音を聞いて滂沱の涙を流す人はそうはいないだろうけれど、本当はフォーレは極めて個人的な死別の悲しみに起因してこの曲を書いたんだよな、ということを思う時、音楽としての出来具合とは別に、これもありかな、と思うのですね。

 オーケストラはアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ。言うことはありません。



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