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白井光子:ヴォルフのゲーテ歌曲集 (9/8)

H.Wolf : Goethe-Lieder
 Mitsuko Shirai (mezzo-soprano)
 Hartmut Hoell (piano)
 CAPRICCIO 10 855

 9月です。シーズン開幕です。夏枯れの季節は終わりました。いよいよ本気モードです。でも、本気を出し過ぎるとお金が足りません。てか、もう大変です。本気出すのも程々にしましょう。
 というわけで、ほどほどに色々押さえてますが、今年も来日系オペラの大物が目白押し。ベルリン、ドレスデン、チューリッヒ、マリインスキー......小ネタのロシア東欧系も来ますし、大変ですが、くどいようですがお金が続きません。チューリッヒは行きましたが、これが大当たりだったので、個人的にはもう今シーズンはいいかなと<ホントか?
 一方で、歌曲系のリサイタルも沢山あります。今年は特にシューベルティアーデ級の歌手が3人。最近売り出し中のローマン・トレーケル、そろそろ中堅級のマティアス・ゲルネ、そして我らが白井光子。
 そう言っちゃなんですが、確かに海外で活躍する日本人演奏家は増えましたし、声楽系で活躍する人も決して少なくないですが、本当に欧州で一級の声楽家として認められている人、ただ「歌う人」ではなく、某か、その分野に於ける一廉の存在として活躍出来ている人は、実際にはそう多くはありません。白井光子は、日本人として数少ない「一廉の声楽家」と言っていいと思います。
 ここ最近、体調を悪くしていたそうですが、復活しての来日公演であります(彼女は欧州、確かドイツ、在住なので)。楽しみです。来日オペラと違って、こっちはまだしも安いから全部行けるし(苦笑)

 ということもあって、ここ最近、彼女のヴォルフ歌曲集を聞いています。ゲーテの詩による歌曲集。
 白井光子は、独Capriccioレーベルに録音を続けています。暫く前には大手量販店で彼女の録音を集めた廉価BOXも売られておりましたし。これがその中に入ってたかどうかは知りませんが、ともあれCapriccioへの、決して少なくない録音の一つです。勿論ドイツ歌曲の王道、シューベルト、シューマン、ブラームス、ヴォルフ、マーラー、R・シュトラウスといったあたりを自家薬籠中のものとしている彼女ですが、中でもヴォルフは重要なレパートリーのようで、コンサートでもよく取り上げていますし、録音もこれだけでなく多く入れています。
 共演のハルトムート・ヘルは、歌曲の伴奏者としても著名ですが、実は白井光子の夫君でもあります。今度の来日でも共演予定です。

 ミニョンの歌5曲やズライカ3曲などを中心に、全23曲の録音ですが、この中で特に推したいのは「君よ知るや南の国」。
 ヴォルフのゲーテの詩による歌曲は多くありますが、特に、中でも名曲の一つに、ミニョンの歌の一つである、この「君よ知るや南の国」があります。
 ミニョンの歌は、ゲーテの詩というより小説である、「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」の中に出てきます。ミニョンは主人公ではありませんが結構重要な準主役級、感受性過敏気味の孤児(女の子ね)で、実はある貴族の血筋なのだけれど、本人も周りもそうとは知らず、それ故に......という設定。そのミニョンが、自分の生まれた所を問われて、幼い頃の記憶を辿りながら、出生の地であろう南の国(イタリアなんでしょうねぇ)を思って歌うのが、「君よ知るや南の国」。
 この詩については、歌曲としてはヴォルフの他にもシューマンなどが作曲していますが、ヴォルフのこの曲は、ヴォルフを代表する曲の一つでしょう。静かな前奏に続いて、追憶に耽るように穏やかに始まる歌は、やがて劇的なピアノに伴われた「御存知ですか、そこを?」というフレーズから、感極まったように「そこへ私を連れて行って!」と歌い上げる。このパターンが3度繰り返される。白井光子は7分8秒掛けています。大曲です。

 これを見事に歌い上げているのが白井光子。まず、日本人ながら、発音がクリアなので、聞きやすい。自分で言うのもなんですが、私も言葉はよく分からないけれど、分からないなりに、発音の良し悪しは音楽としての良し悪しにやっぱり繋がっているなと感じさせます。
 それと、表現力。上記のように書いたものの、本当にこの曲の、歌曲なのにかなり激しい - これは「歌曲としては」という意味ではなく、こうした小編成の音楽なのに、という意味で - ダイナミックな起伏はなかなか伝わらないのではないかと思わざるを得ない、そういう歌なのですが、それを見事にコントロールしている。決して叫んでしまうことなく、音楽的に表現している。

 この他にもいい曲は沢山入っていますが、中で「アナクレオンの墓」と「主顕祭」の二つを挙げましょう。
 「アナクレオンの墓」は、詩人アナクレオンの墓を訪れてその平安なる墓所の様を詠った詩。ヴォルフは、この詩に、静謐で、ロマンティックな曲を付けました。まるで、自らも最後にはこのような安らかな眠りの場を得たいもの、と詠っているかのような。
 一方、「主顕祭」は、打って変わってコミカルな歌。主顕祭とは、キリストの生誕を言祝ぎに東方の3博士(Magi)が訪れたという故事を祝うお祭りですが、それにあやかって飲み食いしようと練り歩く連中の歌。
 大雑把に言えば、この3曲でヴォルフの主要な面は代表出来ると思います。ドラマチックで起伏の激しい表現を身上とするヴォルフ。静謐なロマンティシズムを身上とするヴォルフ。そして、コミカルな、時にはシニカルな現代人的アイロニーを漂わせたヴォルフ。
 現代のヴォルフ歌唱の第一人者と言えるかも知れない白井光子の歌唱は、この3つの面を表現するに十二分のものです。申し分無し。今は女声のドイツ歌曲歌いが結構乱立状態で、本来なら王道を歩んでいる筈のナタリー・シュトゥッツマンは最近ちょっと活動が目立たずだし。そんな中、ドイツ歌曲の女声での第一人者として、もっと聞かれてもいいんじゃないかと思います。




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