サウンドトラック・ヘンリー八世と6人の妻達 (by David Munrow) (10/22)

Henry VIII and his Six Wives
music arranged and composed by David Munrow

 The Early Music Consort of London
 David Munrow (directed by)
 TESTAMENT SBT1250

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 先日に引き続き、またしてもイングランドの古楽ネタです。いや、これを古楽というなら、なんですが。一応。

 ヘンリー8世にまつわる音楽、みたいなのは以前にも書いたのですが、こちらは古楽黎明期の雄、デビッド・マンロウが映画のサウンドトラックとして制作したもの。それがTESTAMENTで出て来るあたりが面白いんですけどね。
 16世紀のイングランドは、王権争いである薔薇戦争で、最後の最後に陰険と名高いリチャード3世を、肖像画で見るからに数倍陰気で陰険そうなヘンリ7世が倒して、王権が安定します。血で血を洗う抗争を親父の代で終わらせた後に出たのがヘンリ8世。6人の妻を持ち、離婚する為にカソリックから分離したという、ファンキーと言うかファッッキンと言うか、まぁなかなかの御仁です。結構治世は大荒れだったようですが、戦争はなかったので、下々はそれほどとばっちりは食わなかったようですが。ちなみに彼の「私生児」が誰あろうエリザベス一世。シェークスピアのおかげもあって、この辺の歴史は英国でも結構人気のある時代です。日本で言えば戦国時代ですかね。
 で、人気があるのでTVドラマにもなるし、映画も作られる。1972年に、「ヘンリー8世と6人の妻」なる映画が作られました。私は観たことないんですが..... この映画のサントラを担当したのが、古楽黎明期の第一人者の一人であったデビッド・マンロウ。1942年生、1976年に亡くなりましたが、もし彼が健在であったら、古楽演奏の歴史は少なからず変わっていたと思います。

 マンロウの面白い所は、その活動の中心が、バロック以前の音楽に集中していたことでしょう。彼の活動の原点となったエピソードの一つに、学生時代、師の研究室に飾ってあった古い管楽器を見て、「あれはどんな音が出るのだろう?あれで演奏された音楽とはどのようなものなのだろう?」と考えたのがこの世界に足を踏み入れたきっかけになった、というのがあります。
 正直、多くの古楽器演奏、ピリオド演奏というのは、そのセンターフィールドをバロック以降に置いています。特にこの15年くらいは、バロックから古典派、場合によってはロマン派までを中心に置いています。意地の悪い言い方をするなら、これらは、「研究が可能な音楽」なのですね。研究して新発見を為したり、奏法を追究したり、ということが可能な世界。一方、それ以前の音楽となると、途端に体系的な演奏が減ります。マンロウ以外ではアルフレッド・デラーによるデラー・コンソートの活動が主でしょうか。最近でもそうした時代の音楽は演奏されるようになってきましたが、やはりまだまだ馴染みが浅い。未だに、バロック以前の音楽を聴く場合、マンロウの一連の仕事は数少ないまとまった録音と言えるのです。
 で、マンロウが楽しいのは、やはり「これってどんな音楽なんだろ?」という好奇心が中心にあることなのですね。そいっちゃなんですが、最近の多くの古楽演奏家、団体は、この核となるべき好奇心が無いんですよね。
 好奇心旺盛のマンロウは、なので、結構アバウトでもあります。実はこのCDに収録されている音楽、多くはマンロウ編曲によるもの。要は、ヘンリ8世の時代に書かれた音楽を適当な編成に編曲したもの。そして、残りは、実はマンロウが作曲したものなんですね。思わずおいおいと突っ込みたくなるところですが、実際聞いてみると、結構それっぽく出来ているのです。勿論、70年代といえど、そこはそれ映画音楽ですから、相応に外連味はあるのですが、言われないとなかなかそうとは思えない。

 勿論、邪道と言えば邪道でしょうね。でも、面白いのですよ、このCD。幾らそれっぽい作り物でも、ここには、古楽を知り尽くそうとする若い音楽家の好奇心が感じられます。決して一丁上がりの既製品ではないのです。大真面目にそれっぽい音楽を作っている。演奏にも手抜きはありません。リコーダーの響きがよく映えます。下手にそれっぽく考えられた演奏より面白いのですよ、これ。陽気な王様ヘンリーに似つかわしい音楽が前半だとすれば、後半はリコーダー大会にヴァージナルにリュートに、と、ダウランドらに当時書かれた音楽が、本編に劣らず耳を楽しませてくれます。

 若くして古楽研究を進めながら、あくまで好奇心は失わなかったマンロウ。70年代でありながら堂々TESTAMENTに登場するあたり、この人の、特に英国での人気が決して失われていないのだな、と思います。
 ちなみに、演奏のThe Early Music Consort of Londonには、ハープシコード奏者としてクリストファー・ホグウッドの名前も見られます。マンロウ、生きていれば65歳。まだまだいろいろやれる歳だのに。残念です。




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