ケニー・ドリュー:ダーク・ビューティー (11/12)

ケニー・ドリュー:ダーク・ビューティー
 ケニー・ドリュー (piano)
 ニール・ペデルセン (bass)
 アルバート・ヒース (drums)
Steeple Chase/ビデオアーツ・ミュージック/コロムビアミュージック VACZ-1071

 ケニー・ドリュー。ある意味毀誉褒貶の激しい人です。
 1928年生まれ、1993年没。ジャズ屋としては長生きした方だと思いますが、その割になんというか微妙な扱われ方をしてます。
 リバーサイドとかブルーノートに録音してた頃はいいのでしょうが、1960年頃に渡欧。この辺から、特に日本のジャズファンには微妙な見方をされます。渡欧する前はバッパーとされていたのが、この頃から割とメロディアスな顔を見せるようになり、更に80年代に入ってBMGジャパンやアルファレーベルに「甘口で女性に人気の出そうなスタンダード or メロディアスなトリオ演奏」を連発して、いわゆる「ジャズファン」から総スカンを食う、という、まぁ、人気商売も大変やねぇ、という人生であります。
 ま、ジャズファンてぇのは江戸っ子振りの半可通が多いのでありまして、蕎麦をどっぷり汁に付けるなんざ江戸っ子じゃねぇ、と盛んに言いたがるのでありますが、そうは言っても確かにあの80年代のケニー・ドリューは甘かった。どのくらい甘いかというと、糖度とかではなくもう物量的に甘かった。今でもあるのか、コージーコーナーにストロベリーシャンテリーというメニューがあって、学生時代に先輩とその彼女と3人で高級寿司(回らないくらいの)食い放題に行って、その後お茶に誘われてコージーコーナーに行ったら「これ食べられたら奢ってア・ゲ・ル♪ね、完食してみせて」というので挑戦して撃沈した覚えがあるけど、あの時くらい甘くて苦しいことは無かった、という、その記憶が呼び覚まされるような物量的な甘さ。(分かり易くいうと、1パイントの生クリームを食べてみよう!という感じでしょうか。アイスじゃないよ、生クリームだよ)

 ........何の話だっけ。そうだ。ケニー・ドリューだ。

 そんなわけで、確かに後年のケニー・ドリューは甘かったし、自分もそれを嫌う人の気持ちは分からないではない。でも、それを堕落とか言うのも違うと思うのです。
 誤解を怖れず言うなら、ケニー・ドリューは、サービス精神旺盛だった、ということだと思うのです。確かに甘いけれど上質の演奏。それはそれでいいじゃないですか。音楽の芸術性を声高に叫ぶ人は、時々、音楽というのが聞き手が居て初めて成立するものだ、ということを忘れているような気がします。
 .........そういう人は、音楽は聞き手が居なくても成立するのだ、って言うのか。

 このアルバムは、1974年、コペンハーゲンでの録音。名盤の誉れ高い、と思うのですが、どうなんでしょ、実際の人気は。甘過ぎず、辛過ぎず。タイトルの「ダーク・ビューティー」は、公民権運動と並行して起きた、黒人の容姿をポジティヴに捉えよう、という運動を想起させます。でも、そういうのとは関わり無く、この演奏は確かにビューティー。
 甘過ぎないなりに、なかなか耳に親しみ易い内容なのもよございます。マイルス・デイビスの All Blues とか、ヴィクター・ヤングの Love Letter とか、最後はA Stranger in Paradise。これ、元ネタは「ダッタン人の踊り」なんですけどね。選ぶ曲もいいのだけれど、演奏もほどよく素材を活かしてオーソドックス。過激には走らず、けれどただ気持ちよく演奏してみましたー、というのとも違う。意外性で勝負はしないけれど、大きく逸脱はしない範囲で辛口。
 それと、取って付けたようなソロがあまり無いのもいいですね。

 そう、ケニー・ドリューのもう一つの特質は、一般的な意味でのセンスの良さ、趣味の良さ、ではないかと思うのです。単に甘いだけなら合成甘味料でもなんでもあるけど、そういうのではない良さ、というのがやっぱりあって。そういうのが、このアルバムにも出ているかな、と思うのです。
 聞く方は、そう難しいこと考えることもないんだと思いますけどね。ケニー・ドリュー・トリオの程良いドライブ感と歌心に身を任せるのも、まぁそれはそれでいいんじゃないかと。



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