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ハンペ演出の「後宮からの誘拐」 (1/7)

W.A.Mozart: Die Entfuerung aus dem Serail K.384
 Mathias Habich (Selim), Ruth Ann Swenson (Konstanze, soprano), Hans Peter Blochwitz (Belmonte, tenor), Kurt Rydl (Osmin, bass), etc.
 Radio-Sinfonieorchester Stuttgart
 Gianluigi Gelmetti (conduct)
 Euroarts 2055018

 久し振りにDVDを取り上げます。モーツァルトの「後宮からの誘拐」。シュヴェツィンゲン音楽祭のライブから。歌手もそこそこですが、演出がミヒャエル・ハンペなのです。
 ミヒャエル・ハンペの演出、というのは、今時はどうなんでしょう。新国立劇場でも一度呼んで、一昨年のモーツァルトイヤーに再演しましたが、あまり話題にはならなかったような。観てる筈なんですが、あまり印象には残っていません。むしろ、記憶に強く残っているのは、セビリヤの理髪師とこの「後宮」。セビリヤは、昨年、横浜のみなとみらいで原演出による公演がありましたが、あれは日本サイドの演出が宜しくなかった。セビリヤでは、15年以上前に国立音大だったかがハンペ演出を使って公演を打っていて、その時の舞台が鮮やかで、それが一番記憶に残っています。後宮は、ケルンのオペラハウスの録画だったかを観たのが最初。
 私は演出家としては面白いと思うのですが、今はコンヴィチュニー演出なんかが最先端と思われてるんでしょうね。それはそうだろうけど、やはりあの種の演出は、よりオーソドックスな演出、或いはハンペのような良質の読み込みを伴った演出があって初めて意味を持つのだということはもうちょっと念頭に置かれなければまずいと思います。

 そうは言っても、このDVDも少々古い。1991年5月の公演です。それこそ15年以上前のもの。キャストも、ルース・アン・スゥェンソン、クルト・リドル、ハンス・ペーター・ブロホヴィッツと、やや以前の歌手がメインです。スゥェンソンは今は40代ですが、先年大病をして、最近復帰した所のようです。確かにこの録画の頃は、次代を担う軽めのソプラノとしてデビューしてましたが、アメリカでの活躍が長くて、METとかには結構出てましたが、一方で録音にはあまり恵まれませんでした。
 まぁ、90年代後半はクラシック不況の嵐が吹き荒れ、録音はめっきり減ってしまいましたし、特に採算が取りにくいオペラの録音は激減しましたから、仕方ないとは思いますが。でも、こうやって改めて聞くと、勿体無いなぁと思います。比類無き、ってほどではないにしても、結構いいんですよ。歌もしっかりしてるし、一応高い所も出るし。

 ハンペの演出は、このオペラで唯一アリアが無い主役級のセリム・パシャ(太守)を中心の一つに据えています。
 まぁ、元々このオペラ、最後は、暴君と目されるべきセリムが、「大方の予想を裏切って」皆を許して帰してやる、という展開なので、そのように演出される事自体はそれほど不思議ではありません。ただ、ハンペ演出では、セリムを単なる支配者ではなく、真面目にコンスタンツェを愛する人物として描くことで、セリム役に深みを与えています。
 元々台詞役のセリムは、うっかりすると、あたかもバロック・オペラの「機械仕掛けの神」のように機能してしまうので、その点が弱いと言えば弱いのです。これを、例えば後年の「皇帝ティトの慈悲」などと比べれば、その心理描写の重みが異なるのは明白です。
 ハンペは、セリムに「得られない愛に苦悩する男」というポジションを与えることで、宿敵の息子すらも許して解放してやるという理由を与えています。これにより、セリムをただの「必要な役柄」ではなく、「ドラマを駆動する推進力の一つ」に引き上げていると言っていいでしょう。最後、セリムが報われぬ愛を悲しむが如くに、砂を掴み上げ、流れ去る様を眺める姿は、ハンペがセリムに与えた最大の贈り物なのかも知れません。




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