エルガー:威風堂々第1番 / 希望と栄光の地 (5/31)

LAND OF HOPE AND GLORY
'The Last Night of the Proms'

 Sarah Walker (mezzo-soprano)
 Thomas Allen (baritone)
 London Philharmonic Choir
 London Philharmonic Orchestra
 Sir Roger Norrington (conduct)
 DECCA 480 0476

 The Last Night of the Proms" と副題が付いてますが、ラストナイトのライブではありません。大体が、オケがBBCではなくてロンドン・フィルですし。しかしまぁベタな演目です。これを振ってるのがノリントン。1996年の録音ですから、もうノリントンだって相応の評価は得てるだろうに。でも、そうでした。サー・ロジャー・ノリントン。卿はブリティッシュなのでした。なるほど。

 Land of Hope and Glory、日本語では希望と栄光の地、と訳されます。元々はエルガーの「威風堂々」第1番の中間部として作曲されたものを、エドワード7世の戴冠を祝して作曲された戴冠式頌歌 (Coronation Ode)に用いられ、その際に歌詞が付けられました。それが、元の「威風堂々」第1番を演奏する際に、合唱を付けて、この頌歌に付けられた詩の一部を歌うようになった、というわけです。
 但し、「威風堂々」に逆輸入したのはエルガーではないので、これはまぁ勝手にやってる訳ですね。ロンドンの夏の音楽祭、プロムスのラストナイトの定番です。

 日本人にとっては、あのラストナイトの雰囲気は異様に感じられるという向きもあるようです。まぁ、確かに、異様と言えば異様ですね。ただ、例えばこの曲や、 "Rule, Britannia!" なんかを、極めて愛国心の強い歌として観じるのも、まぁ気持ちは分かるのですが、ちょっと違うような気がします。
 確かに、歌詞を見ると、「Wider still and wider」とか言ってますし、大体自分達が住んでる場所を平気で「希望と栄光の地」と言っているあたり、なんとも、ではるんですけどね。でもね。Land of hope and glory なのです。決してImperial でもState でもCountry でもないんです。Land なんです。「希望と栄光の国」とよく訳されますが、Landなのです。
アーン作曲のRule, Britannia! にしても、よくよく考えてみると、Britannia はブリテンを象徴した女神なのですが、あくまで Rule, Britannia! Britannia rule the waves なのです。Britons never never never shall be slaves. なのです。つまり、ブリティッシュは決して奴隷にならないぞ!と言っているのです。.........愛国心の高揚、と言う割には、ちょっと弱気でないかい?

 もう一つ、ラストナイトの定番に、Jerusalemがあります。パリー作曲。確かにこの曲、イングランドにイェルサレムを建てよう、と歌うのではあります。でも、そこで歌われているのは、この楽園とはほど遠いイングランドの地に、イェルサレムを建てるまで、我らはこの心の戦いを収めるまい、という内容なのです。

 一度だけ、ラストナイトに潜り込んだことがあります。別に不法侵入した訳じゃありませんが。そこでやっているのは、日本人が「国」とか「愛国」とか考えているのとは相当に違ったものだと思います。
 勿論、そこにいるのはイングランドだけじゃない。GBの旗もあるけど、スコットランド旗もウェールズの旗もある。恐らくは旧英領と思しき知らない旗もあれば、何故かフランスもドイツもブラジルも日本も中国の旗もある。誰かが持って来ているのです。ちなみに私は旗が無いので白いシャツに赤い◎書いて持って行きました(苦笑)要するに、まぁ、なんでもありなのです。とはいえ、確かに多いのはGBの人ですね。
 でも、こうした歌を歌っていることが、ナショナリズムみたいなものか、と言われると、そうだけどちょっと違う、と思うのです。簡単に言えば、排他的なものが、上手く隠してるだけかも知れないけど、あまり感じられない。確かにViva Britain! Viva England! なイヴェントではあるのだけど。でも、それは、どちらかというと、Land を称えるイヴェントのような気がするのです。国、じゃないんですね。国を愛するというよりは、今自分がいる、この地が好きだ、という感情、なのでしょうか。強いて言えば愛郷心、でも、日本語の愛という言葉自体が合わないような気がします。

 プロムスの会場であるロイヤル・アルバート・ホールが最後の舞台になる映画で、ブラス!というのがあったのを覚えていらっしゃるでしょうか。あれは、炭鉱が閉山の危機にあって、活動も覚束無くなった貧しい鉱夫達(というか失業者達?)を中心にしたブラスバンドが、全国大会で優勝するという話。でも、決してハッピーエンドではない。優勝はしたけれど、明日の生活もどうなるかわからない。まぁとにかくどうにかしようとは思うけれど、という形で終わります。その最後、主人公達が、夜の観光バスの二階で真摯に演奏するのが、威風堂々第1番の中間部。つまりは、失業者によって演奏されるLand of Hope and Glory。映画としては痛烈な皮肉でもあります。でもまぁ、演奏してる彼等に、そういう考えはないんじゃないでしょうか。

 まぁ、どう捉えるかはそれぞれですが、善くも悪くももうちょっと素朴というかニュートラルな感じじゃないのかな、と思うのです。鈍すぎる、って言われるかも知れませんけどね。

 しかし、よくこんなの録音してるな......<ノリントン

 あ、演奏ですが、実はノリントンらしさもちょっと出ていて、なかなかです。威風堂々の中間部とか、平生はゆったり演奏したくなる所をきびきびと進めてみせたり、やはり一筋縄ではいきません。






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