トリスタンとイゾルデ (8/11)

R.Wagner : Tristan und Isolde
 Rene Kollo (tenor), Kurt Moll (bass), Margaret Price (soprano),
 Dietrich Fischer-Dieskau (bariton), etc.
 Rundfunkchor Leipzig
 Staatskapelle Dresden
 Carlos Kleiber (conduct)
 Deutsche Grammophon 413 315-2

 旅行に出ています。御時世に逆らって(笑)車で出ているので、色々聞く時間がたっぷりあります。こういう時こそ、普段なかなか聞けないようなのを聞きたいところであります。
 というわけで、名盤中の名盤を久々に持って出ました。カルロス・クライバー指揮の「トリスタンとイゾルデ」。
 クライバーのトリスタンと言えば、クライバーの十八番だった演目。いろいろ問題のありそうなライブ盤も沢山出ていますが、今回は正規録音盤。諸々のライブ盤に比べると出演者の顔触れも立派なのではありますが、色々言われている録音でもあります。特にクルヴェナルのディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウがいまいち不人気。それと、諸々のライブ盤に比してちょっと燃焼度が低いとか言われたり。
 でも、個人的には、燃焼度はともかく、全体に見てもバランスの取れたいい録音だと思ってます。DFDの評価は、まぁ分からなくはなくて、ワーグナーといえどもDFDの歌唱はちょっとオペラには合わない部分もある。それは事実。でも、そのへんの違和感も含めてDFDだから、とは思うんですけどね。

 このトリスタンはもう長年に渉って聞いてますが、最近は聞いてなかった。
 トリスタンと言えば、学生時代にある先輩の御説を伺ったのが今でも忘れられません。
 曰く、トリスタンは1幕に限る。それも、惚れ薬を飲む前までに限る、と。何故なら、惚れ薬を飲んでからの二人は、要するに「乗り越えてしまった」後の話に過ぎない。以後は波瀾万丈だとしても、両者の気持ちはもうはっきりしてしまっている。恋愛というものが本当に面白いのは、そこに至るまでの過程だ。惹かれているのに決してその気持ちに従ってはいけない、というそれぞれの葛藤、いざその葛藤を乗り越えたとして、相手はそれに応えてくれるのか?という恐れと不安、結果として解決策として死を選ぶというドラマ、それこそが面白いのだ、と。気持ちがはっきりしてしまってからの恋愛ドラマなんて、おこちゃま向けのドラマさっ。なんだそうです。
 うーん。ぼく、おこさまだからよくわかんない('-')/
 いや、謂わんとする所は分かるんですが。でも、やっぱり、聞いてて楽しいのは、その後だもんなぁ.......

 ええ、個人的には、好きなのは第3幕であります。重苦しい弦の前奏に始まって、死の夢に囚われて、夢現つに語るトリスタン、そして、待ち侘びた末ついにやってきたイゾルデの腕の中で死んで行く。この展開がやはり音楽的にも好きなのです。
 確かに、聞き込むと、1幕って結構面白いんですけどね。でも、やはり、盛り上がりとしては2幕、更には3幕なんですよね。そういえば、確かシェローだったか、「イゾルデの到来と愛の死は全部夢オチでした」という演出があって、あれはあれで非常に納得の行く、というより納得せざるを得ない演出だったのですが、あれは気に入らない人も多いんだろうなぁ..... まぁ、録音で聞く分には分からないんですけどね。
 クライバー盤の3幕の良さは、何と言っても煽りの効いたオーケストラの演奏。この幕の本当の主役は、実はオーケストラだったりするのではないかと思うのですが、クライバーの演奏は物語を描かせるに秀逸の出来映え。起用されたオケがシュターツカペレ・ドレスデンであることは、一般的には必ずしも最善と評価されるところではないと思うのですが、クライバーとの相性が良かったのか、表現力もあるし、程よく煽情的ないい演奏になっていると思います。
 やっぱり、クライバーのトリスタンを選ぶ理由はこの辺にあると思います。勿論、コロのトリスタンがいい、とか、そういう話はあるのですが、例えば歌手陣で言えば、ベーム盤なんかの方が粒も揃っていると思います。オーケストラの歌を聞く録音、と言ってしまうには少々贅沢過ぎる、というか失礼に当たる歌唱陣なのですが、でも、やはりこの録音に関しては、そういう聞き方をしてるんだろうな、と思います。




AUTHOR: フェランド DATE: 08/12/2008 10:42:59 ご無沙汰してます。お暑うございます。
CD三昧避暑運転旅行、ヨイですねえ。

クライバー=ドレスデンのトリスタン、私も愛聴盤です。
・・・という表記をしてしまうわけで、私にとっても、この指揮者とこのオケを聴く録音。
プライスのイゾルデは昔から賛否ありますが、私はとても好き。
ああ、思えば最近きいてないなあ。

さて、「全ては夢だった」の演出は、ポネルです。バレンボイム=バイロイトの映像。
私は「全てが夢だった」解釈はあんまり好きじゃないのですが、排斥するというほどでもなく、むしろ、この演出では2幕がとっても美しくて素敵だった。大きな木のあちこちに灯がともっているような。

よいご旅行を!

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コメント

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続けてのアルミンクの話......

 不思議なことに、アルミンクに対する評価、日本では低いんですよね。音楽内容に対する評価もあまり高くないんだけど、更に謎なのは、そもそも音楽監督としての仕事とか、その結果の新日フィルがどうなったか、ということについて、本当に評価されていないということ。
 まぁ、アルミンクが定期公演の半分「しか」(アルミンクがいいからではなく、音楽監督なのに半分「しか」振らない、という意味)振らない状況を、「客演指揮者が少ない」という風に評してしまう国柄ですから.....年に定期で2度くらい振れば「音楽監督」とか「首席指揮者」の仕事は達成出来ると考えること自体珍妙なんですけどね。と、これは別室の話ですが....


オペラの演出について話すのは本当に難しいです。客観・主観きりわけて話せる相手が必要で、かつ自分と違う見方をする相手のほうが面白いし、MET的な台本どおり忠実絵解き演出でないと困るという人も、無論いらっしゃるだろうし・・Verdiさんとは、安心して話ができます(笑)

いうまでもなく「男に都合よく女が天に召されて救済が実現する」のはワグナーお気に入りのテーマです。エリーザベトも、ゼンダも、見方によってはクンドリも。

ただ、イゾルデの場合、彼女は「愛=死」のテーゼを高らかに宣言して、そのテーゼどおりに、いわば自律的に死を実現するような感じがします。私にはそれがかっこいい。

あんまり考えたことがなかったのですが、そういう私の立場から、少なくとも3幕は、トリスタンよりイゾルデのオペラであり、トリスタンの比重が軽い・・自分が、そういうふうに3幕を見ていることに、今回気がつきました。

続き。
そういう私の好みからすると、「実は夢でした」といわれると、ちょっと待ってよぉ、という感じがするのです。・・なぜポネルの幕切れが気に入らないのか、これまで自分でもあんまり考えたことがなかったのですが、今回、自分で自分の気に入らない理由が分かって面白かったです。
>イゾルデも来ない。マルケ王も来ない。誰も来ない、だからその後マルケ王の宮廷で何が起きたのか、誰も知らない。
・・・これは全く考えたことがなかった!なるほどこれは面白いなあ。ポネル演出によって、作品が閉じるのではなく、いわば開かれて終わる。私の立場からも、ポネルの演出は音楽を壊してしまうことはなくて、これだけ色々面白く考えることができるのですから、やっぱり偉い演出家だと思います。

400字以内なんですね(笑)
ポネル続き。ポネル=レバイン=ドミンゴで「セビリア」をテーマに片っ端から演出するビデオがあったのを覚えていらっしゃるかしら?昔、3ch.で見ました。あれは面白かったな。DVDにならないかしら。

音楽監督アルミングー別室でVerdiさんがおっしゃっていることにほとんど全面的に共感するなあ。デプリースト、私はショスタコが苦手なので聴く機会こそ少なかったけれど、ブルックナー2番が忘れがたく、「オケの音とレパートリーを創る」ことを意識した、音楽監督としての仕事をする人でした。アルミングがこれだけ長期間続けてくれているのは、本当に幸運なこと。今シーズンは客演の選び方、選曲など、それ自体が彼の高い音楽的知性を示している「作品」だと思います。ほんとに楽しみ。

こんにちは。コメント有り難う御座います。
 ええ、400字以内仕様です。国語のテストでありますでしょ?(笑)

 ポネルとドミンゴのは、確か「我が心のセビリヤ」というタイトルだったかな?LD時代に出てましたね。DVDでも一時出てたんじゃないかな?

 私は決してフェミニストではないけれど、あの「女が死んで男が救済される」ってーのはなんかいやだなー、という感覚はあります。まぁ、それはそれでファンタジーですから。
 ただ、その線で言うと、トリスタンは「女が死んで救済される」という話ではないんですよね、必ずしも。極端に言うと、イゾルデは勝手に悲しんで死んでしまうので、トリスタンの救済や生死とは関係が無い。トリスタンは「イゾルデの到来」と共に救われているのだから。この辺が、ポネルの夢オチ演出に説得力が出る所以だと思います。

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