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ピーター・ゼルキンのゴールドベルク (2/1)

J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 BWV.988
 ピーター・ゼルキン (piano)
 RCA/BMGファンハウス BVCC-37350

 ピーター・ゼルキンの弾いた、ゴールドベルク変奏曲を聞いております。
 録音に限らず、後世に残ってしまう「作品」とかいうものは怖いもので、どうしてもその時々の評価の変遷から逃れることは出来ません。作品それ自体の受け入れられ方も、その評価も、時によって移ろっていく。まぁ、それが面白いのでもありますが。
 この、ピーター・ゼルキンの録音(って断らないと、親父のルドルフも居ますからね、ゼルキンは)、1965年のもので、ピーター・ゼルキンの最初の録音だそうです。ライナーノートによると、ピーター・ゼルキンのこの録音は、グレン・グールドへのオマージュであると同時に自立宣言でもあって、ついでに父親ルドルフに対する葛藤の証、なんだそうです。なんとまぁ可哀想に。一体全体、自身初の録音を、誰やら直接関係の無いピアニストへのオマージュで、同時に自立宣言(?)であったり、父親への葛藤とか、そんなものとして録音するような音楽家がいるもんでしょうか。随分失礼な話であります。

 まぁ、ゴールドベルク変奏曲といえば、どうしても1955年にグールドが録音した「あれ」を思い浮かべてしまうのは、レコードリスナーとしては自然な話ではあります。それに、グールドの録音は、そうは言っても「ピアノでゴールドベルクを弾く」「ピアノでバッハを弾く」という課題に対する一つの解を見事に提示しているのだから、その後の録音にどうしても「グールド比」という評価基準を立てて見てしまうのも事実です。加えて、ゴールドベルク変奏曲に関しては、1982年以降、グールドの2回目の録音より後の方が、「グールド比」という視点が重視されてしまうかも知れません。
 だからといって、例えばニコラーエワやヒューイットといったピアニストが、グールドに対峙する為にゴールドベルクを録音した、と考えるのはやはりおかしな話です。そんな暇なピアニストはいないのであって、それぞれがそれぞれの求める音楽を作った結果でしかない筈。それはピーター・ゼルキンだって変わることはないと思います。

 実際、この録音から、音楽的にグールドの影を殊更に見出そうとするのはちょっと無理があると思います。まず何よりもアプローチが違う。グールドが拘った「非ピアノらしさ」とでも言うべき音色、響きと、ピーター・ゼルキンのそれとは大いに違います。何よりも「ピアノらしい音」を決して拒絶していません。控え目ながらペダルだって使います。つまり、ピアニストとして、「ピアノでゴールドベルク変奏曲を弾く」ということをやっている訳です。ピアノがピアノらしく鳴ることを前提として、ゴールドベルク変奏曲を弾いている。ついでに言えば、ピーター・ゼルキンは歌いません。それはまぁ本来ピアニストとして普通のことで、何故ならピアニストとはピアノで音楽を表現するのが仕事なのですから。
 実のところ、グールドのバッハ演奏、特にゴールドベルクのそれは、ともすると過大評価されている節があると思います。いや、確かにいい演奏なのですが、ピアノで演奏していながらピアノから逃げようとするグールドの演奏、ピアノで表現出来ることには限界があると言いながら歌ってしまう演奏は、実のところ負けているのであり、逃げているのです。妥協するよりいいし、正直でいい、という見方もあるにせよ。グールドは邪道です。邪道故にいいのであり、面白いのです。
 それと、ピーター・ゼルキンの演奏とは、まるで違うと言っていいでしょう。よく聞くと、この演奏、微妙に揺らぎがあります。例えば同じ変奏の中でのテンポの揺れ、或いはデュナミークの揺れ。決して変奏曲一つ一つが一貫して演奏されているわけでなく、微妙な表現の差異を伴っている。それは、今の視点からすれば「それはバッハじゃない」と言われかねない。でも、ピアノの演奏からすれば、そうした揺らぎが表現上の工夫となっているのは普通のこと。このバッハは、そういうバッハです。ピアノでバッハを弾く、ということに対する、これも一つの解。

 とはいえ、確かに、1965年にこの録音をデビュー録音として世に問う、というのは、なかなか度胸のいることだったかも知れません。考えてみれば、グールド以降、ピアノで録音されたゴールドベルクというのは、あまり記憶にありません。そもそもゴールドベルク自体、まだそれほど一般に広く認知されていたとは言えないと思いますし。むしろ、グールドと較べたくなるのは、そういう理由なのでしょうかね。ある意味非本質的な話ではあるのですが。




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