ルチア・ヴァレンティーニ・テッラーニ その4(3/10)

G.Rossini "La Cenerentola"
 Lucia Valentini Terrani (mezzo-soprano)
 Francisco Araiza (tenor)
 Enzo Dara (bass), etc
 Cappella Coloniensis
 Gabriele Ferro (conduct)
SONY CLASSICAL SM2K 90419

 クラシック音楽は流行に左右されない、と思われることが多いようですが、実際はもう流行り廃りの激しいことでは他のジャンルにゆめ劣らないのであります。マーラーが一時爆発的に取り上げられたのもそう。グレゴリオ聖歌が全世界的にヒットしたのもそう。バブルの頃にはサティブームがあったし、アダージョ何とかってシリーズが売れまくったのも記憶に新しい。いや、足下の日本での誰も寝てはならぬブームは如何か。別に流行がいけないわけではないのに、妙にそういうのを否定しようとするからかえって不自然になるんじゃないかと思います。

 いわゆるピリオド楽器・ピリオド演奏の流行と軌を一にして、オペラでも「新・原典主義」とでも呼べるような動きが出ます。ムーティあたりが一生懸命やってました。このオペラは「本来」こういうものだった筈だ、ここでこういう風に技巧や高音を見せびらかしたりするのは、作曲者の本来の意図に反する、とか。
 こうした動きと連動してか、1990年代にはロッシーニのオペラも「見直され」ます。例えばセビリヤの理髪師でヒロインのロジーナをソプラノがやるのは「おかしい」、「間違っている」。ロッシーニのこのオペラは「本来は」こういうオーケストラで演奏される「べきだ」、といった調子。モーツァルトのオペラだと、その動きは一層顕著になります。
 でもねぇ。音楽、特にオペラっていうのは、本来なら歌手を初めとする演奏者が第一なんじゃないかと思うんですけどね。確かに「正しい」配役による「正しい」公演ってのも悪くないんですが、同時に、不適切でも聞いてみたいいい歌手というのはいるわけです。

 チェネレントラの正規録音です。いやぁ、やっぱり正規録音は音質もいいし、ええですねぇ。1980年頃らしいです。詳しい情報が記されていないので。アルジェのイタリア女と同じオーケストラと指揮者、歌手もアライサやエンツォ・ダーラといったお馴染みの面々が並びます。
 アライサとヴァレンティーニ・テッラーニ。どちらも、ちょっと響きが豊かで、それ故にとても楽しい演奏になってます。ヴァレンティーニ・テッラーニは更に一層声が若々しい。でも、幼いというのではない、成熟したいい声です。でも、そうした声は、次の世代の流行じゃなかったんでしょうね。元々録音の少ないヴァレンティーニ・テッラーニですが、それでも、もし、流行にも関わらず起用される場があったとしたら、どうなっていたのか。
 共演のフランシスコ・アライサも、忘れられ度ではヴァレンティーニ・テッラーニに劣りませんが。実は彼はこの前後も結構いろいろな録音に顔を出してます。それも結構いい役で。モーツァルトでは、アーノンクールの録音にも参加したことがありますし、80年代に録音されたマリナーの一連のオペラ録音(私のお気に入りのシリーズ!)でもよく起用されてます。でも、その後活動が狭まり、それだけでなく、こうした録音が忘れられつつあります。
 この二人に共通するのは、豪奢な声ではないけれど、比較的透明感もある割に響きも豊かな、美声タイプであること。豪奢でない、というのが敗因なのでしょう、中途半端な位置付けのまま忘れ去られようと、というより、無かったことになりつつあります。
 確かに、そういう音楽家というのは、タイプとして、居ます。でも、この二人の場合、ロッシーニやモーツァルトでの「あったかも知れないもう一つの流行」、葬り去られてしまった路線を象徴しているような気がしてなりません。

 もう一度、この録音に、アライサに、そしてヴァレンティーニ・テッラーニが顧みられることはあるのでしょうか。多分、ないんだろうなとは思うんですけどね。でも、それで済ますにはあまりに惜しい、Alternative Takeであるこの録音など、もっと聞かれて欲しいなぁ、と思いながら、終わりにしたいと思います。




AUTHOR: mozart1889 URL: http://www.doblog.com/weblog/myblog/41717 DATE: 03/12/2006 06:54:36 おはようございます。
このロッシーニは懐かしいですね。
フェッロの演奏は一世を風靡しましたね。出てくるロッシーニのオペラがすべて絶賛。
ボクは忘れていませんよ。よ~く覚えています。
ヴァレンティーニ=テッラーニは最高のロッシーニ・メッゾでしたし、フランシスコ・アライサもボクは大好きでした。もちろん、アライサ起用のマリナーのオペラシリーズだって最高でした。
ジュリーニの「大地の歌」はテノールがアライサなんです。今もよく聴きます(^-^)。

しかし、クラシック音楽の世界にも流行があるもんですね。時の移ろいに愕然としつつ、あの時代の録音をいまだ愛聴しております。
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